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スオムス文庫 アレニパ-1-3『やんくま その3』

「はいっ!あーんしてください」
 語尾にハートマークか、音符でも付いていそうな調子で、サーシャ大尉は私の口元へスープを運んでくれる。
私は赤ん坊のように、朝食を食べさせてもらっていた。
「次は、はいっ。ベーコンですよ」
 大尉は同性の私から見ても美人だと思う。
だから、こういう風にしてもらいたいと、憧れている人は少なくないのかもしれない。
そういう人たちは、今の私と大尉を見たら羨ましがるんだろう。
だが、待って欲しい。
そういう感情を抱くのは、叩き折られて軟体動物のようにぐんにゃりした、私の両腕両脚を見てからでも遅くない。
そして考えなおして欲しい。誰でもないあなたの未来の為に。
「美味しいですか?」
「は、はい」
 返事をしたものの、激痛に耐えるので精一杯。味なんてわかりやしない。
私でなければ大事件だっただろう。私ですら魔法を使って夕方いっぱいかかりそうだというのに、普通の人ならどれだけ時間が必要になることか。
そういうわけで、大尉にご飯を食べさせてもらいつつ、私は魔法を使って傷を癒していた。
「あの、大尉……。もうお腹いっぱいなので」
「そうですか?食べないとよくなりませんよ」
 大尉は心配そうに眉をひそめたが、どこまで本気なのやら……。
なにせ、朝激痛で目を覚ますと、両腕両脚はこの様だし、脇にはスパナを握りしめた大尉がにこやかに立っていたのだ。どう考えても……。
 いや、人を疑うのは良くない。きっと疲労骨折だ。
それはそれとして、ここ数日、何が切欠かは分からないが、大尉のことがさっぱり分からなくなってしまったのも事実だ。
今までは優しくも厳しい、可憐な上官って感じだったのに。
今は、
「その手じゃ一人でお風呂入れませんよね。私が洗って差し上げますね」
 なんて凄く嬉しそうに言う始末。
大尉、本当に何があったんだろう。
悩みがあるなら聞いてあげたい。人に話せないプライベートなものなのかもしれないけど……。
「じゃあ食器を片付けてきますね。すぐに戻って来ますから」
 そういって、大尉は部屋から出て行った。
大尉の部屋に一人、ぽつんと取り残される。
身動きも取れないし、暇だなぁ……。
改めて部屋の中を見回すと、女の子らしい小物に紛れて工具や何かの部品が飾られていた。
無骨と言って良い銀色の鉄塊は、なんだか不釣合だ。もしかしたら、思い入れのある品物なのかもしれない。
大尉が帰ってきたら話を聞いてみよう。
それにしても、大尉はどうして私の世話を焼いてくれるのだろうか。
そんなに私は危なっかしいのかな。でも、カンノやクルピンスキー中尉の方が色んな意味で危ないと思うんだけど……。
色々考えたり、考えないように目を背けたりしているうちに、さっぱり何が何だか分からなくなってきた。
「はあ、人の部屋って暇だな……。動けないし」
「あら、今はカタヤイネンさんの部屋でもあるんですよ」
「そうかもしれませんけど……うわっ!?」
 いつの間にか、私の横に大尉が座っていた。
顔が近くて二度びっくり。
「し、食器片付けに行ったんじゃ……」
「そうでしたっけ。忘れちゃいました」
 忘れるものじゃない、と思うけど……。
大尉はうっとりとした顔で、至近距離から私を眺めている。
気恥ずかしい。
 試しに「楽しいですか」と聞いてみたら、「ええ、とっても」といい顔で返されてしまった。おかげで邪険にもできない。
「そういえば、カタヤイネンさん、今動けないんですよね」
 大尉は右腕の、折れたところに手を這わせた。
激痛が後頭部を通り、頭を痺れさせる。
「痛いですか?」
 痛い、痛いけど、声を出すと叫んでしまいそうだ。そんな情けない真似はしたくない。ぐっと歯を食いしばり、痛みに耐えた。
「ふふっ」
 大尉は楽しそうに手を動かす。そのたびに痛みが頭まで響いて、私は歯をくいしばる。
それが20分程続いて、ようやく私は開放された。
ぐったりと壁にもたれかかって息を切らし、涙が頬を伝った。
大尉が顔を近づけ、私の涙を舐めた。
「っ!?た、大尉……。何を……?」
「ごめんなさい、カタヤイネンさん。つい」
 つい、なんなんだろう……?
「さて、私はお仕事行ってきますから。ゆっくり治しててくださいね」
 ばたん。
また一人で取り残された。
しかし、さっきのこともある。本当に大尉が出ていったのか分からず落ち着かなかった。
結局私は、彼女が帰ってくるまで、全く心の休まらない時間を過ごしたのだった。



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テーマ : 二次創作:小説
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