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スオムス文庫 ラルクル-1-1 『弱いんだよ』

「なんだ、クルピンスキー。真面目だな。誕生日だというのに」
 整備班とストライカーについて打合せしていると、ラル隊長がやってきた。
「いや、最初は誰か誘ってデートに行こうと思ってたんですけどね。逆に誘われすぎちゃって。小隊組んでデートするわけにも行きませんし、みんな断りました」
 そしたら逆に暇になってしまい、休日だというのに、ストライカーの調整をやっているというわけだ。
断ってしまった以上、街に出かけるのもなんかバツが悪いし、かといって、基地に何かしら娯楽があるわけでもない。
私としては時間つぶしになればいい、程度のものだったが、整備班は大喜びだ。曰く、
「中尉は出撃の時くらいしか捕まりませんからね。折角のお誕生日に申し訳ないんですが、今日くらい、我々とデートしてくださいよ」
 だそうで、香水香る美女との楽しいデートが、油臭い男衆との窮屈な仕事の時間に一変してしまった。
「そういうことか。まぁ、お前らしいといえばお前らしい」
 隊長は苦笑し、
「それなら少し付き合え。これから少し用事があってな。街へ行くんだ」
「街ですか……。まあ、隊長と一緒ならいいか……。それで、プレゼントでも買ってくれるんですか?」
「ああ、真面目なクルピンスキー中尉には、後でたっぷりプレゼントをくれてやろう。書かせなければならない書類が山になっているのでな」
 いけない、薮蛇だ。私はなんとか逃げられないか言葉を探していたが、隊長は先回りして整備班に、
「そういうわけで、中尉を借りても構わないか?」
「はい!もう中尉にお聞きするところは終わりましたので!」
「ありがとう。では、クルピンスキー。運転は任せた」
 あっという間に逃げ道は塞がれていた。

「はぁ……。来るんじゃなかった」
街に着くや、隊長はエライ人とお話があるとか何とかで、さっさと市の庁舎に入っていってしまうし、さっきから知り合いの女の子に見つかっては、
 「私の誘いは断ったのに!誰とデートなんですか!?」と問い詰められるしで散々だ。
まぁ、中にはそのあとわざわざ家へ帰り、用意していたプレゼントを持ってきてくれる良い子もいたりして、嬉しいやら申し訳ないやら。
「待たせたな」
 そうやって時間を潰しているうちに、隊長が戻ってきた。
「あ、おかえりなさい」
「10分で終わるはずだったんだがな……。どうもここの市長は若い女と見ると見境がなくなるらしい」
「おモテになりますね。羨ましい」
「ふん」
 そこで隊長はちらり、と後部座席に目をやり、
「あのプレゼントの山を受け取った人間ほどではないさ」
 と皮肉げに笑った。
「それで、この後はどうしますか?基地へ?」
「いや、まだ回るところがある。すまんが、もう少し付き合ってくれ」
 やれやれ……、人使いが荒い。
私は肩をすくめて返事をし、結局夕方まで隊長のお供をさせられたのだった。

基地に着くと、もうほとんど日が暮れていた。結局、仕事で終わってしまったなぁ。まぁ、仕方がないか。
夕食まで、あと1時間程だろう。空腹を覚えたが、我慢したほうが良さそうだ。
隊長は車から降り、
「ご苦労だった」
「どういたしまして。隊長とのデート、楽しかったですよ。出来れば今度は夜にご一緒したいですね」
「上官とデートすると色々気詰まりだぞ。やめておけ」
 そう言って、基地の中へと消えていった。
ちょっと冷たいように見えるけど、格好いいんだよなぁ。何だかんだでそういうところが隊長らしいし、あまり気にはならなかった。
それよりも、私は後部座席に積んだプレゼントの山をどう運んだものか。抱えて持って行ける量ではない。
貰い物だけに、あまりぞんざいな扱いはしたくないし……。
結局私は、整備班から台車を借り、一つ一つ、丁寧に載せていった。どれも、くれた女の子の顔と名前がしっかりと浮かぶ。
 後でちゃんとお返ししないとね。
「あれ?このワイン……」
送り主の顔が思い出せない。というか、ワインなんてくれた子、いたっけ?
困ったな……。お返し出来ないじゃないか。
どこかに名前がわかるものはないかと探していると、座席に二つ折りになったカードが落っこちていた。
拾いあげて開くと、中には流れるような文字。
私は驚いて、何度もカードを見返し、そして基地へと目をやった。
 もう、誰もいない。
「え、ええー……。参ったな……。こういうのって、反則だ」
私は無意識のうちにワインを抱きしめ、カードに書かれたメッセージを、何度も何度も、頭の中で繰り返していた。

『誕生日おめでとう、伯爵。    ラル』



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