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スオムス文庫 ラルクル-1-2

 私は時間さえあれば、基地内のバーで夜を過ごすことにしている。
ラル隊長のお墨付きで設置された簡易なバーは、階級も性別も、ましてや兵科なんて関係なく、基地のスタッフ全員の憩いの場だ。
最初はカウンターが設置されているだけだったのに、悪乗りした連中によってテーブルやら椅子やらが運び込まれ、
 誰かの描いた絵や、写真までもが飾られている。
毎晩誰かしらが騒ぎ、それはもう賑やかなものだ。
エディータやポクルイーシキン大尉なんかは苦い顔をするのだけど、私はこういう場が基地内にあるのは良い事だと思う。
最前線にいるのは、私たちウィッチだけじゃない。
 だから、基地のスタッフ全員が上手く連携するには、何かしらの潤滑材が必要になるわけだ。
隊長もそれをよく理解しているから許可を出してくれたのだろうし、
 うるさ方の二人もちゃんと利益を認めているから、時々付き合ってくれたりもする。
 まあ、滅多にないんだけど。
 私はバーの一角、一番奥のテーブルに座った。ウィッチの専用席だ。
 どんなに混んでいようと、ここだけはちゃんとあいている。知らずに座ろうものなら、即座に周囲の連中から袋叩きに合うだろう。
そのかわり、隣のテーブルなんかは競争率が高いらしい。ウィッチを肴に酒を飲みたい不届き者が多いせいだ。
 まったくこの基地は、ウィッチに限らず愉快な連中が多くて退屈しない。
「中尉、ご注文は?」
 ひと息つくと、ヒゲの生えたごついバーテンが、注文を取りに来てくれた。私は短くいつもの、と答えてくつろぐ。
このバーテンとは長い付き合いで、原隊時代から一緒だ。整備の腕は良いし、余計な口を聞かないところが良い。
それに、彼はゲイだから、ウィッチに余計な感情を抱くこともない。気軽に付き合えるというわけだ。
 突然、騒がしかった店内の喧騒が、一層激しくなった。
何事かと見てみると、隊長が入ってきたところだ。
「……なるほど」
 物分りの良い上官というのは、人気があるものだ。それが実力と、容姿に優れた若い女性とくれば、それはもう女神のように崇められる。
「来ていたのか、クルピンスキー」
 私は片手を上げて返事をした。
このバーでのルール。細かいことは抜き。
「私にも同じものを」
 隊長はバーテンに声をかけ、私の向かいにどっかと腰を降ろした。
「珍しいですね、隊長が付き合ってくれるなんて」
 隊長は片眉を上げ、
「忙しくなければいつだって来るさ。ロスマンや大尉にばかり仕事を押し付けるわけにもいかんからな」
 お待たせしました、と野太い声がして、目の前にグラスが二つ置かれた。
「あれ?」
 この酒、いつもと違うな。
「サービスです。良いのが入りましたので」
 ニッと笑うヒゲ面のバーテン。意外と愛嬌があって、時々こういう心憎い気配りもしてくれる。
「曹長。私に媚びても昇進はさせんぞ」
「それは残念です。もう一つ上の酒をお出ししておけば良かった」
 隊長も愉快そうに冗談を飛ばしていた。
「あいつも変わらんな」
「あの腕に抱かれたいと思う男は何人いるんでしょうね」
「いやぁ、案外抱きたいと思っている男のほうが多いのかもしれん」
 こういうやりとりが出来るってところが、うちの部隊の良いところなんだろうな。
「久々に飲むと、酔うな」
「飲み過ぎですよ。私より2杯は多く飲んでいた」
「3杯だ」
 隊長とゆっくり話すのは久々だった。ついつい昔話に花が咲き、お互い気付いたときには相当飲んでいた。
隊長の肩を抱えているが、正直言って、支えているのか支えられているのか、さっぱりわからない。
「ああ、駄目だ……。腰が痛い」
「もう少しで私の部屋ですから……。せめてそこまで頑張ってください……」
 隊長の部屋は、私の部屋より結構奥にある。
部屋まで送り届けたいが、お互いフラフラで中々しんどい。
私は震える手で乱暴に扉を開け、隊長を担ぎ込んだ。
「つきましたよー……」
「うー……。ベッド。せめてベッドまで運んでくれ……」
「お願いですから吐かないでくださいよ……」
 隊長はベッドの脇に辿りつくや、私の肩を抱いたまま倒れこんだ。
当然、私も一緒に倒れることになる。
ぼふっと顔に柔らかいシーツが当たり、酒で火照った顔をひんやりと冷やしてくれる。とても心地良い。
「寒いな……」
 耳元で声がする。思ったより、ずっと近いところに隊長の顔があるらしい。振り向いたらキス出来るだろう。
そんな事を考えていると、隊長はずるずるとベッドへ這い上がり、
「お前も来い……。お前のベッドだ、遠慮するな……」
 と、わかるようなわからないような事を言った。
私も酔っていたので黙って従う。
横になって、鼻と鼻がふれあいそうな距離で向かい合った。
お互いの吐き出す、酒臭い息が混ざり、なんだかキスしているような気分になって、柄にもなくドキドキしてしまった。
「……上官命令だ、泊めろ」
「寝る気満々で何言ってるんですか……」
 逆に、隊長はいつもどおりの隊長だ。
このマイペースっぷりに、少し腹が立つ。
「なんだ、そんなに顔を近づけて……。キスでもして欲しいのか」
「いや、別に……んっ!?」
 ……まぁ、お互い、酔っていたんだろう。この後のことは、想像にお任せする。
翌朝、隊長のにおいの残るベッドで目を覚ました私は、隣に空いたひとり分のスペースを見て、なんの理由もなく、寂しいと感じてしまった。



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