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スオムス文庫 クルマル-1-1『詐欺師』

「やあ。久しぶりだね。退役したんだって?」
 突然の訪問者。扉を開けると、元同僚の”伯爵”クルピンスキーが立っていた。
「……お前なんぞ知らん。帰れ」
「待って待って待って待って!」
 半開きの扉を閉めようとする私と、足を挿し込んで抵抗する伯爵。
「警察を呼ぶ前に、一応目的だけ聞いてやる」
「泊めて?……ああ!待って!閉めないでお願いだから!」
「すみません、ほんと迷惑なんで……」
「そんな余所余所しいこと言わないで。私とティナの仲じゃな……ごめんなさいごめんなさい!話聞いてください!」
「下らない理由だったら本当に警察呼ぶからな……」
「ありがとう」
 そう言って、伯爵はにっこり微笑んだ。
不覚にもドキッとしてしまう。
 別に、こいつに特別な感情があるわけじゃない。ちょっと不意を突かれただけだ。誰にするでもなく、心のなかで言い訳を繰り返した。
「20歳になってからね、訓練学校の教官をやってたんだ。これでも教え方が上手いって評判は良かったんだよ?
 私にしても、教え子たちは目に入れても痛くないくらい可愛かった……」
 そう語る伯爵の顔は優しげで、教え子について語る口調は温かみを感じさせるものだった。
この女ったらしも、こういう顔をするのか。
私は意外な一面を見た気がして、少なからず驚いていた。
師は弟子を育て、弟子は師を育てるとはよく言ったもので、こんなどうしようもない人間も変わることが出来るんだな。
そんな風に見直した気分になっていたのに、このエセ伯爵ときたら、
「それで、可愛がり過ぎたのがバレちゃってね。教官クビにされて、行くトコなくなったんだ」
「……お引き取りください」
 あれ!?ティナー!?
なんて叫びつつ、扉がドンドン叩かれる。が、私はもう知らない。
っていうか、あいつは変わらないよ。三つ子の魂百までだ。感心した私が馬鹿だった。
やがて扉の外は静かになり、段々と夕日も暮れてきた。
「っと……。もうこんな時間か。そろそろ夕食を買ってこないとな……」
 何となく時間の感覚が狂っている。
というか、あの胡散臭い元同僚のおかげで、調子がすっかりおかしくなってしまった。折角の休日だというのに、ついてない。
玄関を出ると、白いシャツが目の端にチラついた。クルピンスキーが座り込んでいる。
無視だ。無視。
門から出て、早足で自分の家から離れた。
一歩、二歩、三歩。足を止めて、振り向く。
俯いたまま動かない。
また歩き始めて、四歩、五歩、六歩。振り向く。
あいつはくしゅん、とくしゃみを漏らした。
七歩、八歩、九歩。
また俯いて、捨て犬のような哀愁を漂わせている。
「……っ。ああもう!!」
 道を全力で逆走し、クルピンスキーの胸ぐらを掴んで立たせた。
「私がダメなら他のヤツの所に行けばいいだろ!?なんで何時までもここにいるんだ!!」
 なんだか知らないが、凄くイライラする。感情に任せ、喚き散らしてしまった。私らしくない。
「ごめん……」
 クルピンスキーは小さく呟いただけだった。
本当にしょぼくれた犬のようで、記憶にある、常に余裕たっぷりの”伯爵”クルピンスキーはここにいない。
「お前はもっと強引なやつだっただろ!?」
「……そう、だったかな」
「私はな、落ちぶれた昔の仲間なんて見たくないんだ!」
「ごめん……ごめんね……」
 ああ、もう、仕方がない。
「クソッ。今日だけだ」
「……え?」
「今日だけは泊めてやるって言ったんだ」
 こんな弱った奴を前にして、放っておける訳ないじゃないか。それが昔の仲間なら、尚更だ。
「本当!?ありがとう!」
「えっ」
 突然元気になったクルピンスキーは私を抱きしめ、上着の裾から器用に鍵を取り出して、扉を開けた。
「な、なにっ」
 キツく抱かれ、身動きがとれないまま、クルピンスキーに玄関へと押し込まれる。
「ティナは可愛いね……。本当に単純なんだから……」
「お、お前……!?」
 ズボンの上から尻を撫でる、大きな手。この後、私がどんな目に合わされるかなんて、考えてみるまでもなかった。
でも、イライラは消えている。
やっぱり伯爵は伯爵だった。なぜかは知らないが、全然変わらないバカに、ちょっとだけ、安心した。

後日、軍の知り合いに問い合わせたところ、クルピンスキーは教官なんてやっていなかったし、退役すらしていなかった。
そのクセ何故か私の家に住み着き、今日も自分勝手に生きている。
悔し紛れに殴ること三度。全く堪えていないようなのが、腹立たしい。



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