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スオムス文庫 アレニパ-1-4『やんくま その4』

 この頃、朝起きると太股から血を流していることが多い。
その傷も妙なもので、縦に10センチ、横に5センチと結構大きめで、皮膚を剥がれたようになっている。
触ると痛いが、再生するなら大した時間もかからず、首をかしげながら、魔法を発動させるのが日課になっていた。
それよりも、問題は血でビショビショになったシーツと毛布の方だ。
最初は毎日変えていたものの、3日も続くと諦めが着いてしまい、血で汚れたものを乾かして、そのまま使っている。
大尉は真っ赤なシーツと毛布を見ても、何も言わず、傷を心配してくれた。
大尉は毎晩遅くまで起きて仕事をしているようで、このところ、とても疲れた顔をしている。
それなのに、私を部屋に住まわせ、色々と世話を焼き、傷の心配までしてくれるのだ。
その優しさには、いくら感謝してもしたりない。
そんな状態で一ヶ月が過ぎた頃、ようやくそれが止んだ。
今だに何があったのか、全然わからないが、起きてまず感じるのが痛み、という生活からはおさらばできたらしい。
そのことを大尉に言うと、まるで自分の事のように喜んでくれて、大尉は疲れた顔を、明るく綻ばせた。
良かった、大尉の心労が減って。私もなんだか嬉しかった。
その晩、私はいつものように大尉とおしゃべりしていた。
 ふと、大尉の手元に目をやると、見慣れない人形が、大事そうに抱えられている。
大尉はその視線に気付いたらしく、少し照れくさそうに、
「その、手作りなんです」
 と言って、はにかんだ。
人形は少女のようで、短い金髪にブルーのセーター、白いズボンを履いている。
 腰には、革製の小さなポーチなんかも巻いていて、私の服装によく似ていた。
ちょっと親近感が湧くなあ。
「すごく凝ってますね。可愛いですし」
「本当ですか!?」
 私が褒めると、大尉は身を乗り出して満面の笑みだ。
相当な自信作なのだろう。
なにせ、肌色の部分は何かの動物の革のようだし、着ている服も凄く丁寧な作りだ。これを作るには、相当な手間と時間がかかったに違いない。
「あ、もしかして」
 この頃疲れ気味だったのは、この子を作っていたから?
 そんなことを聞くと、大尉は顔を赤くしてコクン、と頷いた。
「なんだ、良かった……。私がストライカーを壊すから、そのせいで寝る時間を奪ってるんじゃないかって、ちょっと心配だったんです」
「もう!私だって趣味の一つや二つ、あるんですから。
 それに、カタヤイネンさんがストライカーを壊すせいで、お仕事が増えているのも事実です。気をつけてくださいっ」
 照れたままなせいか、お説教にもいつもの怖さというか、威厳がない。
私はついつい、からかうような調子で返事をしてしまい、大尉はぷくっと頬をふくらませて拗ねてしまった。その上そんな状態で、
「心配、なんですから……」
 なんて呟かれてしまった日には、なんというか、凄く大事にされているような気分になって、私まで赤くなってしまう。
無言。
なんというか、凄く気恥ずかしい沈黙だ。
ちらりと大尉を見ると、同じように大尉もこっちを見るものだから、お互いますます顔を赤くして俯くことになる。
 なんとかこの沈黙を破ろうと思っても、
「「あっあのっ!」」
 なんて、示し合わせたようにお約束を行ってしまい、逆効果。
私はもうどうにでもなれ、という感じで、顔を火照らせたまま、黙っていた。
「……あ、あの。カタヤイネンさん、そろそろ寝たほうが……。明日も、訓練ですよね」
「あ……。は、はい。その、大尉は?」
「私はもう少し、お仕事がありますから。カタヤイネンさんとお話しするのが楽しくて、ついサボっちゃいました」
「うっ。そ、そうですか……」
 何でこの人は、面と向かってこういう事を言っちゃうんだ!
「あ、そうだ。今日はお茶をお出ししてませんでしたね。淹れてあげますよ」
「でも……」
 大尉はこれから仕事もしないといけないのに。
「私のお仕事よりも、カタヤイネンさんが明日に疲れを残さないほうが大事です。上官の務めと思ってください」
何から何まで、お世話になりっぱなしだ。
大尉の淹れてくれるお茶はとても美味しいし、飲むとすぐに眠くなってきて、毎晩ぐっすり眠ることができる。
私としてはありがたいことこの上ないのだが、大尉の負担になっていやしないかと、少なからず不安なのだ。
「はい、どうぞ。熱いので気をつけてくださいね」
 マイナス思考な私を他所に、にこやかにお茶を渡してくれる大尉。
ちびり、ちびりと口を付けていると、すぐに眠気が襲ってきた。
いつか、どうしてこんなに良くしてくれるのか、聞いてみたい。
そんなことを考えつつ、私はゆっくりと、ベッドに横たわった。
おやすみなさい、大尉……。
「カタヤイネンさんで作った、ニパさん人形……。褒められちゃいました……」
 大尉が何か呟いたようだったが、眠くてよく聞いていなかった。



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