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スオムス文庫 クルマル-1-3『扶桑流』

 マルセイユの朝は、一本の牛乳から始まる。
これは活力を補給すると同時に、一日を始めるという意味の大切な儀式でもあるのだ。
だが、もし牛乳を切らし、儀式を行えないとしたら、どうなるのだろう?
答えは簡単だ。
「ふっっっっざけるなァー!!!!!」
 目を血走らせたマルセイユは、まだベッドで寝息を立てているクルピンスキーに掴みかかり、
「おい!私は昨日牛乳買っとけって言ったよなぁ!?なんで買ってないんだこのスカタン!!!!」
「おはよ……。元気だね……」
「買ってこい!今すぐ買ってこい!!」
「お店開いてないよ……」
「なんとかしろ!!」
 眠たげに目をしょぼしょぼさせるクルピンスキーをベッドから引っ張り出し、彼女の着替えをばさばさと投げつける。
店が開いてないなら牧場まで行って来いと言わんばかりだ。
実際は、牧場に行くくらいなら、店が開くのを待ったほうが早い。
「……あ、そうだ」
「ああ?」
 何を思ったのか、クルピンスキーは上に脱いでいたシャツを脱ぎ、実りのいい自分の乳房をさらけ出した。
「私の飲む?」
「とっとと出てけ!!!」

「あいつの頼みは、ちゃんと聞いやってるのに……。何で私の頼みは忘れるんだよ……」
 ひとしきり暴れ、少しだけ心の晴れたマルセイユは、一人だけの部屋で、肩を落としながら呟いた。
牛乳がないのもそうだが、一番腹が立ったのはそこだ。
どうせ、クルピンスキーは自分との会話なんて、一々覚えていやしない。
そう思うと、無性に腹が立った。
イライラが沸き起こっては消え、それを繰り返しているうちに、
 なんとも捉えようのない感情が、クルピンスキーに対して募っていく。
 何をする気力もなく、ただ座ってグチグチと呟いていた、そんな時だ。
かつてアフリカで一緒に戦った元上官の加東圭子から、バカデカい荷物が送られてきた。
中には足の短い扶桑式のテーブルと布団、それと何故か、真っ赤なジャージが二着。
同封された手紙によると、このテーブルは噂に名高いコタツらしい。
「これがコタツか……!」
 扶桑人は、冬になるとこのコタツにこもって生活すると聞いたことがある。
昔ケイに買ってくれと頼んだが、アフリカには必要ないと一蹴されたのだ。アフリカだって夜は寒いのに。
「覚えていたのか……」
 誰かさんとは違って。
マルセイユは意外と、根に持つタイプらしい。

「ただいまー……」
 日がくれた頃、寒さで体を震わせながら、クルピンスキーは帰ってきた。
どうやったらマルセイユの機嫌を治せるか、街をうろつきながら悩んでいるうちにこんな時間になってしまった。
彼女は彼女なりに、今日の事を反省していたのである。
「あ、おかえり」
「ただいま……って、何そのカッコ」
 マルセイユのジャージ姿に、目をぱちくりさせるクルピンスキー。
「今日ケイが送ってくれたんだ。お前のもあるぞ」
「私も着るんだ、それ……」
 何故かマルセイユは気に入っているらしく、朝あれだけ悪かった機嫌は、すっかり良くなっていた。
クルピンスキーにはちょっとわからないセンスだ。
(まぁ、おそろいと思えば悪くない、かな……?)
「それより、ちょっとこっち来いよ!」
 とりあえず、そのままご近所さんの前に出るのはやめさせないと、と考えていたクルピンスキーは、強引に居間へと引っ張りこまれた。
「あれ、これ……」
「コタツだ」
 そうだ、コタツだ。
 昔502にいた頃、同僚の扶桑人が似たようなのを使っていた。
「これもケイが送ってくれたんだ。暖かいぞ」
 ケイ、ケイと繰り返されると、流石にちょっと面白くないのだが、まぁ、マルセイユが喜んでいるなら良い。
「じゃあご飯作るよ。今日はコタツで食べよっか」
「ああ!」
 年甲斐もなくはしゃぐマルセイユに、クルピンスキーはムラッとした感情を、抱いてしまうのだった。

 夕食に続いてデザートのケーキまで平らげ、さらにクルピンスキーが大人しくジャージを来たことで、マルセイユはこの上なく上機嫌だった。
こたつにしても、床に座るというのはなんとも違和感だが、下にふかふかの布団を敷いているので座り心地は悪くないし、何より温かい。
「ティナ、顔がだらしないよ」
 なんて、苦笑される始末だ。
「扶桑人はこんないいもの隠し持ってたんだなぁ」
「なにそれ」
 テーブルに顔を押し付け、へにゃー、と表情を緩めるマルセイユを、クルピンスキーは微笑みながら見ていた。
「ケイさんに感謝しないとね」
「だなぁ。なんか見繕って買ってきてくれよ。お返しに贈るやつ」
「じゃあ、今度一緒に買い物行こうよ」
「ええ……。寒いしなぁ……」
「太っちゃうよ……」
 以前から思っていたが、コタツは人の行動力を著しく奪うのではないだろうか。
あの活発な管野でさえ、コタツからはあまり出たがらなかったのだ。
話しかけてもあー、とか、うー、とかの生返事ばかりで、クルピンスキーは段々寂しくなってきた。
そうなってくると、悪戯心がむくむくと沸き上がってくるわけで……。
「うわっ!?」
 マルセイユがビクッと体を跳ねさせた。
「ふふふ」
「お、お前……!!」
 クルピンスキーの足先が、マルセイユの無防備な内ももを、妖しい手つきならぬ足つきで、つつ……、となぞったのだった。
「すべすべしてて気持いいなぁ」
「や、やめろ馬鹿!!」
 マルセイユは指先から逃れようと暴れるが、コタツの中は狭く、すぐに捕まってしまう。
「う……っく」
 やがて色っぽい声まで出始める始末で、さっき抱いたムラムラが、余計に煽られる。
 しかし、しかしだ。
クルピンスキーの冷静な一面は、今朝怒らせてしまったことを思い出せと言っている。
もしここでコトに及んでまた機嫌を損ねたら、もう口を聞いてくれなくなるかも知れない。
そんなことになったら……。
「ま、いっか」
「な、何が……っ」
 頭からコタツに潜り込んだクルピンスキーは、太物の内側に舌を這わせ、下から覗き込むようにマルセイユを見た。
「……こ、こんなところで」
「おねがい」
「ち、ちょっと」
「おねがい」
 顔は満更でもない。よし、オッケーのサインだな。
 勝手に合点したクルピンスキーは、マルセイユの答えを聞くことなく、コタツへと引きずり込んだ。
翌朝、二人は裸のままコタツに入って朝を迎え、仲良く風邪を引いてしまったという。



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