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スオムス文庫 もっミーナ-1-1『安心』

 既に空は暗くなり、基地の中は静まり返っていた。
 そんな中、ミーナ中佐と坂本少佐は仕事に追われ、ランプの薄明かりの中、黙々と書類を片付けていた。
「美緒、そろそろ休憩しましょう」
「む。……そうだな、茶でも淹れよう」
「私が淹れるから、座ってて。あなたの方が書類多いじゃない」
「そうだな……。では、すまん。頼む」
「はいはい」
 ブリタニアにいると、紅茶に不自由しないのは良い。
 しかし、いつもミーナに任せていると紅茶ばかりになるのだ。扶桑人の坂本は、時々無性に緑茶が恋しくなるのだった。
「とはいえ、このままだと私の仕事を手伝わせることになるしな……」
 それは申し訳ない。
 書類仕事は苦手だが、だからといって負担を全て押し付けて良いということにはならない。
 今坂本が取り組んでいるのは、明後日に控えた作戦の飛行割と、戦略だ。
 この頃バルクホルンの様子がおかしいせいで、彼女の使い方に配慮しなくてはならない。
 精神に不安を抱えている者は出撃させないのが坂本のやり方なのだが、ここのネウロイは強敵ばかりで、メンバーも11人しかいない。
 大エースのバルクホルンを使わないのは、飛車角落ちで戦うようなものだ。
 それに、彼女は歴戦の勇士でもある。戦いのうちに、本来の自分を取り戻すのではないかという、希望的な観測もあった。
「あら、明後日の……。まだ決めてなかったのね。やっぱり、トゥルーデ?」
 いつの間にか、ミーナが戻ってきていた。
「ああ……。飛行割りから外せば、バルクホルンの誇りを傷つけかねん。だが、今戦場に出せば……。
 果たして、誇りを奪ってでも地面に縛り付けておくべきなのか、危険と分かっていても空に飛ばしてやるべきなのか……」
「ねえ美緒。それは、私たちがいくら考えても仕方のないことよ。トゥルーデの意思を尊重しましょう。彼女だって、新兵じゃないのよ」
 そうだな。坂本はつぶやき、書類を脇へどけた。
 ミーナは湯呑を坂本の前に置き、急須で茶を入れる。紅茶ではなかった。
「飲みたかったんでしょう?こっちが」
「参ったな。お見通しか」
「わかるわよ。付き合いもそれなりに長いんだもの。それに、美緒は人一倍顔に出るから」
 淑やかにミーナは笑った。
 坂本は肩をすくめ、湯呑に口をつけた。美味い。というよりも、懐かしい。
 どうも、この年下の上官にはかなわないな。
「歳といえば……」
「どうしたの?」
「いや、独り言だ。私ももうすぐだと、思ってな……」
 もう、二十歳の誕生日が目前に迫っていた。それは同時に、今の仲間たちと飛べる時間が、僅かしか無いことを示している。
「美緒……」
 過去の坂本を知っているだけに、ミーナの顔も曇った。
「私が隊を抜けたら……。ああ、そうか。次はバルクホルンが宮藤達の指導をやるのか。少し不安だな」
「今のままなら、ね……。でも、前線に出れなくても、ここで参謀なり私の副官なりは、出来るでしょう?
 残って新人の教育くらいは、やってくれてもいいんじゃないかしら」
「そうだな。だが……」
 坂本は視線を落とした。
 言わんとすることはミーナにも分かっているのだろう。
「私は、私は……」
「やめましょう。飛べなくなったときのことは、飛べなくなってから考えればいいじゃない。今はまだ飛べるのだから」
 ミーナは坂本の湯呑を取り上げ、流しに捨てると、新たに淹れ直した。
 いつの間にか、冷めてしまっていた。
「すまん」
「気にしないで」
 苦笑して、終わり。少しばかり気まずい話題だったが、尾は引かなかった。

 会話がないままに、視線を交わすことがないままに、時間だけが過ぎていく。
 不思議と居心地は良い。ちらり、と視線を上げると、ミーナは目を閉じていた。寝ているわけではないが、とても安らかな顔つきだ。
 坂本の湯呑が空になると、ミーナは手にとって、お茶を淹れてくれる。
 あとどれくらい、仲間たちと、友人達と共に戦えるだろうか。
 いや、考えるのをやめよう。今はそう思えた。
 不思議なことだ。



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