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スオムス文庫 アレニパ-2-1『実践編』

 サーシャは自室で、届いたばかりのオラーシャ陸軍広報を、食い入るように読んでいた。
 その号から、501のリトヴャク中尉による、スオムスウィッチとの接し方についての連載が開始されたのだ。
「なるほど……。確かに私は怖がられてばかりかもしれません……」
 思い浮かぶのは、説教をする自分と、しょんぼり正座するニパ。
 自分の役割がうるさ方とは言え、これでは距離は一向に縮まらない。
「まずは、こちらに目を向けさせること……」
 それにはどうしたらいいのか。
 記事には甘えて見せることが必要、とある。
 だが、歳も階級も上で、今まで説教するばかりだったサーシャが突然甘えてみせたところで、どれほどの効果があるというのだろう。
 そのやり方が有効だとしても、サーシャの場合はそのやり方に至るまでに、数段階のステップが必要なのだ。
「まずは、普通にお話するところから、ですね……」
 雑誌を握り締め、意を決したように呟いた。
 実のところ、実戦の統括に整備、訓練まで見ている多忙なサーシャは、ニパと雑談をする機会がほとんど無かったのである。

 時は変わって朝食。
 管野の早朝訓練に付き合わされ、ヘトヘトになったニパは、眠たげに目をこすりながら、もふもふとパンをかじっている。
 なんとも小動物的で、庇護欲をそそられる仕草だ。
 サーシャとジョゼは、うっとりとその光景を眺めていた。
 一度でいいから、膝に座らせて食事を食べさせてあげたい。
 出来ることならそのままお昼寝させてみたい。
 そんなほのぼのとした、幸せな光景を想像するだけで、何はなくとも三日は戦えるのだ。
 そんな時だ。
「カンノ、ついてる」
「んあ?」
「もう。ほら、動かないで」
 ニパは管野の頬についたパンくずを、ヒョイと取り上げ、そのまま自分の口へと運んだ。
 一瞬にして、サーシャとジョゼの笑顔が凍りついた。
「ああ、ほら、今度はスープこぼして……」
 布巾でテーブルを拭き、
「はい。私はいいから、カンノ食べなよ。お腹空いてるでしょ?」
 と言って、卵焼きを分けてやる。
 傍から見れば姉妹のようで微笑ましいのかもしれないが、サーシャとジョゼは、ちょっと笑えない。
 菅野は管野で、
「おう、悪ィな」
 なんて無邪気な顔を見せている。
 ニパと菅野は終始この調子で、ジョゼとサーシャはやりきれない気分に包まれつつ、そのやり取りを見る。ほか4名はお構いなしに食事を進める。
 これが502の食事風景であった。

 夕方。この日は出撃が無く、1日を訓練に費やした。
 模擬戦を終えた菅野とニパは、並んで滑走路へと降りてきた。
 サーシャはタオル片手に駆け寄り、ニパに手渡そうとする。
「あ、カタヤイネンさ……」
「ニパてめぇ!逃げてちゃ訓練になんねーだろうが!!」
「そんな事言ったって!カンノが真正面から体当たりしてくるから仕方が無いだろ!」
「あ、あの……」
「ハッ!いつもヒョとヒョロ逃げ回りやがって!お前がそんな風に腑抜けだから、いつもオレが苦労するんだ!」
「何言ってるんだよ!訓練で殺す気か!?っていうか、いつもカンノが考えなしに突っ込むせいで、私の方こそ大変なんだぞ!!」
「あんだと!?この根性無し!」
「猪武者!!」
「「うぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!!!」」
 残念なことに、二人はお取り込み中であった。
 駆け寄ったサーシャには見向きもせず、格納庫へと入っていく。無視どころか、気付かれすらしなかった。
「うう……」
 がっくり肩を落とすサーシャの脇を、疲れた顔のロスマンが通り抜けていった。

 夕食後、管野とニパは仲直りしたらしく、並んで椅子に腰掛け、楽しそうに話していた。
 サーシャは食堂の外から、二人を眺めている。
 この二人はいつもこうだ。いつもなんでもないことでケンカするくせに、すぐに仲直りして、楽しそうにしている。
 この間なんかは、寝入ってしまった管野にニパが毛布をかけてやり、就寝時間には、おんぶして部屋まで運んでいた。
 ニパは仕方が無いなぁ、とか呟きつつ満更でもないようだし、管野は管野で、ニパには心を許しているようだ。
「ふぅ……。いいコンビ、なのかもしれませんね……」
 戦闘全般を任されているサーシャとしては、ケンカの多い二人の関係は容認出来るものでもないのだが、こういう光景を見ていると、大丈夫だという気がしてくる。
 ここで二人の間に入るのも野暮ってものだろう。
 部屋に帰って書類でもやろう。
 サーシャはそっと、食堂を後にしたのだった。
 
『パートナーの好意を自分へと向けさせることが必要です。
 とにかく鈍感なスオムス人には、口に出して言うだけでなく、それとなく甘えて見せることも必要でしょう。
 そして、しつけの最終段階として、肉体的接触を行いましょう』
「……ハッ!?」
 ベッドに入り、うとうとしていたサーシャは、記事の文面を思い出して跳ね起きた。
「か、管野さん……?」
 恐るべし、扶桑のウィッチ。



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