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スオムス文庫 ドミジェン-1-1『1122の日』

 ロマーニャの古い街並を、まるで正反対な二人組が仲睦まじく、並んで歩いていた。
 ドミニカ・ジェンタイルと、ジェーン・ゴッドフリーだ。
 ジェンタイルは長身、黒髪のむっつりとした女で、ガムを膨らませたり萎ませたりしながら、さも気だるそうに歩いている。
 ジェーンは小柄な金髪で、何が楽しいのか、むっつ歩くジェンタイルににこにこ顔で話しかけつつ、動き回っていた。
「ああ!大将!あの犬可愛いっすねー!」
「そうだな」
「おお!あの建物なんすかね!すっごいきれい!」
「そうだな」
「大将!あの喫茶店ちょっと寄ってみましょうよ!」
「そうだな」
 終始こんな調子だが、別段ジェンタイルの機嫌が悪いわけではなく、いつだってこんな調子なのだ。
 それどころか、二人を知る者がこの場に居合わせていれば、ちゃんとジェンタイルが上機嫌であることがわかるだろう。
 もっとも、それは側にいるジェーンの機嫌が良いからなのだが。
「んんー!このケーキ美味しいー!」
 フォークを口に咥え、目を輝かせるジェーンを、ジェンタイルは物欲しそうに見つめていた。
「あれ、大将もケーキ食べたいんすか?頼めばいいのに」
 ちがう、そうじゃない。
 ジェンタイルは首を振った。
「??」
 どうやらジェーンは、何を求められているのか、さっぱり検討がつかないらしい。
 ジェンタイルはため息を吐いた。
 そして、フォークを握ったままのジェーンの手を優しく掴むと、器用にケーキを小さく切り取り、自分の口へと運んだ。
「んな!?ななななななな」
「やっぱり、ジェーンに食べさせてもらうと、何でも美味いな」
「じ、自分で食べたんじゃないっすか!」
 真っ赤な顔から発せられる抗議には耳を貸さず、今度はジェーンの手からフォークを取り、
「お返し。ほら、口開けて」
「う、うぐぐぐぐぐ……。あー……んむ」
「美味いか?」
「おいひい、れす……」
 恥ずかしげに俯くジェーンを見て、ジェンタイルの顔に、薄く微笑が浮かんだ。

「もう!大将!人前であんなことして!」
「ジェーンだって喜んでたじゃないか……」
「それとこれとは別っす!」
 どう違うんだろう。
 ジェンタイルは割と本気で、そのことについて悩んでいた。
 時は夕暮れ。
 ぷんすか歩くジェーンと、マイペースに後を追うジェンタイル。二人の距離は1メートルと離れていない。
 見ようによっては、悪戯して叱られた大型犬と、それを引っ張る飼い主の少女にも見える。
「そろそろ暗くなってきたな……。夕食は何がいい?」
「うーん。私は何でも良いっすけど……。大将は何が?」
「ジェーンの手料理が良い」
「んなっ」
「ジェーンの手料理……」
 ジェンタイルはすすす、と距離を詰め、すがるような目をジェーンに向けた。
「……あーもう、わかりました!わかりましたよう!それで、何が食べたいんすか!?」
「……?手料理……」
「いや、そうではなく……」
 本当に何を言っているかわからない、という様子のジェンタイルに、ジェーンも呆れ顔だ。
「私が何を作ればいいんすか」
「ジェーンの作ってくれるものなら、なんでもいい」
「ま、また大将はすぐそういう事を言う……。ああ、もう!いいっす!ほら、買い物して帰りますよ!」
「……ああ」
 ジェーンはジェンタイルの手を取ると、ずんずんと歩き出した。急がなければ店が閉まってしまう、とでも言わんばかりだ。
 手をつながれたジェンタイルは引っ張られつつ、仏頂面である。
 だが、幸せなのは、誰から見ても明らかだ。
 ジェーンの手を、ぎゅっと握り返しているのだから。



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