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スオムス文庫 クルマル-1-5『あやしい』

 昼食の準備を終えたクルピンスキーは、いそいそとコートを羽織り、外出の準備をし始めた。
「じゃ、ちょっと出かけてくるよ。ティナの分の昼食はキッチンにあるから。晩ご飯には帰るよ」
「出かけるって、どこに?」
 そんな話は聞いていなかったが……。
 怪訝な顔で問いかけるマルセイユに、
「ちょっと古い知人にね」
 クルピンスキーはお茶を濁した。
 パタン、と扉が閉まり、クルピンスキーは出て行く。
「……怪しい」
 女か?女なのか?
 マルセイユは、こっそり後を付けることにした。

マルセイユはコートにサングラスという出で立ちで、クルピンスキーを追っていた。
(外に出るのも久々だな……)
 普段衣類はクルピンスキーが用意してくれるため、久々に自分で探すとなると、随分手間がかかってしまった。
 見失うかと焦ったが、なんとか後を付けることが出来て一安心だ。
 クルピンスキーは駅前の喫茶店へと入っていく。
 だいぶ復興が進んでいる地域ともあって、休日の喫茶店には人がいっぱいだ。
「お一人様ですか?」
「いや、待ち合わせなんだ」
「クルピンスキー様でいらっしゃいますね。それでは、お席にご案内いたします」
 前もって話がついていたらしく、すぐに奥の席へと通されていった。
 随分と手際が良い。
 大分前から約束があったようだ。
 それを今の今まで自分に言わなかったというのか?
 ますます怪しい。
 マルセイユは店に入ると、クルピンスキーから隠れられる席を選んで座った。
 店内が騒がしいため声は聞きづらいが、立ち並ぶ植木鉢のお陰でクルピンスキーからは見えないし、同席者の顔も確かめられる。
 これ以上無いベストポジションだ。
「お待たせしました!」
 元気な少女が、クルピンスキーの横に立った。顔はまだ見えないが、通りの良い声で、誠実な響きがあった。
 やはり、女だ。
 飛び出そうかとも思ったが、まだ早い。もう少し様子をみるんだ。
 自分に言い聞かせ、なんとか耐えた。
 少女はクルピンスキーに向かい合うように座り、注文をしたようだ。
 お辞儀したウェイトレスがその場を離れると、ようやく少女の顔を拝むことが出来た。
「あいつ……?どこかで……」
 少女の顔には見覚えがある。
 どこで会ったのだったか。よく、思い出せな……、
「クリス……!何故あんな奴と……!」
 横から聞こえた声で、思い出した。
 そうだ、クリスだ。バルクホルンの妹の。どうしてクルピンスキーなんかと……。
「ってお前……、バルクホルン!?」
「ん?お前は……、マルセイユか!?」
「「っムグッ!!?」」
 二人とも大きな声を出してしまい、互いの掌で口を塞ぎ合う。
 幸い店内の喧騒にかき消され、クルピンスキー達は気付いた様子がない。
 マルセイユとバルクホルンは同時に息を吐き、手を退けた。
(何故、お前がここにいるのだマルセイユ……!)
(それは私のセリフだこのシスコンゴリラ……!)
(私はクリスに悪い虫がつかないよう見張っているだけだ……!)
 ヒソヒソと話し合う、怪しい風体の二人。正直言って、悪目立ちしている。
(……そうだな、今日だけは協力してやるよ、バルクホルン)
(……!?どういう風の吹き回しだ)
(怪しむな。クルピンスキーに用がある)
(そういうことか……。いいだろう、今日だけは協力して事にあたろう)
(よし来た)
 二人はガッチリと固い握手を交わした。
 出会ってから10年が経とうとしているが、これは初めてのことだった。
 
 クルピンスキーと話すクリスは、とても楽しそうだ。
 並んで歩く二人の後ろを、怪しい二人が付け回す。
 警官に呼び止められたが、これはバルクホルンが将官だったお陰であっさりと退けることが出来た。
 地位のある変態は、実に手に負えない。
「ク、クリス……!あんな奴と、何を楽しそうに話している……!」
「くそっ。ミーナがいれば何か分かったかもしれないのに……。どうして連れてこなかった!」
「軍務では仕方が無いだろう……!」
 何故かミーナが協力すること前提で話す二人であった。
「おい、マルセイユ!余所見をするな。店に入ったぞ」
「あれは、本屋か。どうする?」
「私は出入口を見張る。お前は中に。見失ったら一旦外に出てこい」
「了解」
 マルセイユは高い書架の立ち並ぶ中へと入っていった。
 クルピンスキーは目立つ。すぐにその頭を見つけることが出来た。
 二人のいるコーナーは、ウィッチ関連の書籍を集めた所だった。
 クリスは写真集や伝記、小難しい研究所などを手に取り、クルピンスキーに何か喋っている。
 そういえば、クリスはウィッチに憧れているのだったか。
「姉は300機撃墜の大エースだというのに、他のウィッチにお熱とは……。バルクホルンも報われないな……」
 まぁ、身内の凄さというのは過小評価されがちだし、なによりバルクホルンがあんな調子だ。
 仕方がないといえば仕方がないし、いい気味でもある。
「マルセイユさんは……」
 突然クリスの口から名前を呼ばれ、マルセイユはぴくりと反応した。
 見つかったのかと思ったが、二人は本に目を向けたままだ。
 気になる……。
 聞き耳を立てるが、中々聞き取れない。
 もう少し、近くに寄らなければ……。
「ずっと昔、サイン下さったんですよー。その時凄く嬉しくて。今でも部屋に飾っています」
 通りのいいクリスの声が先に聞こえてきた。クルピンスキーも何か言っているが、まだ聞き取れない。
 もう少し、もう少し……。
「サイン、新しいの欲しくない?」
 ようやくクルピンスキーの声も聞こえてきた。
 書架を挟んで二人の真後ろまで来てしまっていた。
「え?それは欲しいですけど……」
「じゃ、この写真集にしてもらおっか。良いよね、ティナ」
「っ!?」
「あっ!」
 不味い!
 マルセイユが逃げようとしたときには遅かった。
 腕を掴まれ、抱き寄せられるようにして、クルピンスキーの腕の中に収まる。
「うわぁ!本物だぁ!」
 クリスは目を輝かせた。
 後を付けていた負い目もあり、凄く眩しい。というか、居心地が悪い。
「かくれんぼは楽しかった?」
 クルピンスキーは、クリスに聞こえないよう、そっと囁いた。
「お前……!?」
「してくれるよね、サイン」
 手元には、数年前に発売された、マルセイユの写真集。
 中にはネグリジェ姿の写真も収められており、正直言って、封印したい過去だ。
 そんなマルセイユの心を見透かしたように、クルピンスキーは笑いながら写真集を近づけてくる。
「くっ……」
 マルセイユは負けを認めた。

 バルクホルン姉妹と駅で別れ、二人は並んで歩いていた。
「機嫌直してよ。私が浮気しないってのは分かったでしょ?」
「ふん。尾行されてることに気付いてたからかもしれんだろ。ノーカンだ」
 クルピンスキーは苦笑した
 そして、マルセイユの手を握る。
 抵抗はない。
 調子にのってクルピンスキーは、指と指を絡める恋人繋ぎにしようと手を動かし、
「いたっ」
 手をつねられ、黙って元の繋ぎ方に戻した。
 二人は並んで夜のとおりを歩いていた。
 家に帰れば、すっかり冷めた、ふたり分の昼食が待っている。



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