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スオムス文庫 ナオニパ-3-1『わからない』

「おいニパ。ちょっと付き合えよ」
 朝食を終えたニパは、管野に襟首を掴まれ、強引にハンガーへと連れ込まれた。
「早朝訓練なら付き合っただろ……。私は今日は非番なんだから、休ませてよ」
 ニパは不満げに呟いたが、
「オレも非番だ。どうせお前も暇なんだろ?訓練しようぜ」
 要するに、暴れたくて仕方が無いということらしい。力が余ってしょうがないのだ、管野は。
「やだよ、今日は一日本読んで過ごすんだから」
 それほど読書が好きなわけでもないニパだが、管野との危険な訓練――メニューに問題があるわけじゃない。管野の飛び方のせいだ――よりはずっとずっとマシだ。
 管野は不満げに眉をしかめた。
 怒鳴ったり、掴みかかったりしてこない分まだ良いが、あまり気分の良いものじゃない。
「そんなに暴れたいなら、クルピンスキー中尉に付き合ってもらえば?」
「……それじゃ意味ねーだろ」
「え?なに?」
 管野の呟きは小さくて、よく聞きとることが出来なかった。
「何でもねぇよ。それより、中尉はさっさと出てった。デートだってさ」
「忙しい人だなぁ……」
 となると、付き合ってくれそうな人はもういないわけだ。
 隊長とサーシャ大尉は言うに及ばず、ロスマン曹長も忙しい。哨戒明けで下原は寝ているし、ジョゼは昼食の当番だ。
 仕方がない。これも運が悪かったと思って諦めよう。力を持て余した管野に、基地内で暴れまわられても困る。
 ニパはため息を吐いた。

「3戦3勝!」
 滑走路に降り立った管野は上機嫌だった。
 一方ニパは、ペンキでべしゃべしゃに濡らされ、肩を落としている。
「あー!腹減った!シャワー浴びたらメシ食いに行こうぜ!」
「はいはい……」
 二人はストライカーを、ハラハラした顔で見ていた整備班に預け、シャワーを浴びた。
 ペンキの汚れがない管野はさっさと上がってしまい、遅れてでたニパは遅いと怒られた。
「理不尽だ……」
 なんともやりきれないニパであった。

「今日は扶桑から物資が届いたので、管野さんのリクエストに答えてみました」
 ジョゼはいつもの柔らかい微笑を浮かべつつ、なにやら丸い物が無数に乗っかった大皿をテーブルの中心にドン、と置いた。
「おお!」
 管野は目を輝かしたが、他の反応は薄い。
 ラル隊長が珍しいものを検分するように大皿を眺めつつ、
「ジョゼ、これは?」
「おにぎりと言うらしいです。扶桑の伝統的なお料理で、丸めたご飯の中に色々な具を入れるんだとか」
「ふむ」
 ニパはかつての同僚で、今は501に所属するエイラからおにぎりに着いて聞いていたが、実際にみるのは初めてだった。
 皆が思い思いに手を伸ばし、口に放り込む。
 中身はイモやザワークラウト、夕べの残りのパスタだったりしたが、概ね好評だった。
 管野はしきりに首をかしげていたが。
 ニパもこれはこれで、とパクついていたのだが、2個目を飲み込もうとした瞬間、喉に詰まらせてしまった。
 顔を青くして、喉元を叩く。
「お、おい!?水飲め水!!」
 気付いた管野が素早く水を渡してくれ、事なきを得た。
「大丈夫ですか?」
 ジョゼも心配そうにニパを見ていた。
「ありがと……。ジョゼ、水もう1杯もらえるかな……」
「あ、はい!」
 キッチンに駆け込んだジョゼは、すぐにコップに水を注いで持ってきてくれた。
 ニパは受け取ろうと手を伸ばし、コップを掴んだ、が……。少しズレてしまい、ジョゼの手ごと握ってしまった。
「……っ!!」
 ジョゼは真っ赤になって、手を離し、どう飛んだのか、コップは一回転してニパの頭に着地し、水をぶちまけた。
 管野が唐突に不機嫌そうな表情を浮かべたが、皆ニパに注目していたため、誰も気付かない。
「ご、ごめんなさ……!」
「あ、いいよいいよ……。慣れてるから……」
 あらゆる不幸になれたニパは、最早この程度では動じない。
 謝るジョゼをなだめていると、グイ、と唐突に引っ張られ、転びそうになりながらもなんとか立ち上がる。
 振り向くと、管野が怖い顔をしてニパを睨んでいる。
「風邪引くだろ。シャワー浴びに行くぞ」
「えっ。ちょっ……!ジョゼ、気にしなくていいから!」
 朝に引き続き、またしても管野に引きずられるいニパであった。

 シャワー室。
 ニパが今日は3度目のシャワーだなぁ、なんて考えていると、管野はタオルを投げ渡し、
「あ、ありがとう……」
 ふんっ、と鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
 なにが原因かは分からないが、機嫌が悪いらしい。
 その割にタオルを渡してくれたり、文句や暴力もない。
 らしくない。一体どうしたのか。
「カンノー?」
 シャワーを浴びつつ、話しかけてみる。返事はなかった。
「あれ、いないのか?カンノ?」
「……うるせぇよ」
「なんだ、いるんじゃないか。返事くらいしろよ」
「オレの勝手だろうが」
「何怒ってるんだよ」
「怒ってねぇ」
「怒ってる」
「知らねぇよ!!」
 ガシャン!と大きな音が響き渡った。
 管野がロッカーを蹴ったらしい。壊れていなければいいのだが……。無理か。
「私、何かした?」
「別に」
「でも……」
「わかんねぇっつてんだろ!」
 真後ろで声がして、シャッとカーテンが引かれた。
 ニパがシャワーを浴びる個室に、管野が入ってくる。管野は俯いていて、表情はわからない。
「ち、ちょっと!」
 ニパは慌てて身体を隠し、個室の奥隅へ寄った。
「っせぇな。知るかよ。知らねぇよ」
 管野はぶつぶつと、繰り返している。
「カ、カンノ……?」
 いつもと違う管野の様子に、ニパは段々心配になってきた。
「知らねぇ、知らねぇ」
「カンノ、どうしたんだよ」
「だからわかんねぇって……。わかんねぇんだよ……」
 管野は顔を上げた。
 何か酷く焦っているような、追い詰められているような……、そんな表情だった。
 自分にシャワーがかかる事にも構わず、一歩、二歩とニパに近づき、きゅっと抱きついた。
 突然のことに、ニパは驚いた顔をしたものの、
「濡れちゃうよ」
 優しい顔で抱き返した。
 なんとなく、管野が怒っている理由がわかったからだ。
「寂しい?」
 管野は反応を返さない。抱きついて、まるで泣いているように肩を震わせている。
 ニパはそっと手を伸ばし、シャワーの勢いを強くした。
 個室の中は水がタイルを打つ音で一杯になり、管野もニパも、お湯でびしょぬれになった。
 二人が離れ、少し気まずそうに笑いあうには、あと数十分、時間が必要だ。



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