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スオムス文庫 芳イラ-8-1『1126の日の月見酒』

「今日は良い風呂の日なんですよ、エイラさん!!」
 突然部屋に乱入してきた宮藤は、拳を握り、そう力説した。
 サーニャはもう哨戒に出かけたため、部屋にはいない。
 もしこれが昼間、サーニャの眠っている時間だったら、ゲンコツの一つでもお見舞いしてやるところだった。
 エイラはテーブルに広げたタロットカードから、面倒くさそうに歪めた顔を上げ、
「意味わかんねーぞ、ミヤフジ……」
「扶桑の語呂合わせです!11月26日は良いお風呂の日なんです!」
「だからなんだよ……」
「一緒にお風呂入りましょう!」
 ふすん、と鼻息荒く、宮藤は言った。
「別に風呂ぐらい、いつも入ってるじゃねーか……」
「違いますよぅ。今日はリーネちゃんと話して、お菓子とか用意したんです。お風呂で夜景を見ながらお茶会です!」
「ほう」
 宮藤にしては、中々面白い。
 サーニャがいないというのが気になったが、今度二人っきりでやろうと思いついた。
 きっと粋な計らいだと喜んでくれるに違いない。
「でも、隊長はなんて言ってるんだ?勝手にそんなコトして怒られるんじゃないか?」
「ミーナ隊長は良いって言ってくれましたよ?少し遅れるけど参加してくれるって。バルクホルンさんもくるそうです」
「バルクホルン大尉がぁ……?」
 ミーナが賛成した理由も良くわからないが、バルクホルンは一番来そうにない人物だ。
 風呂なんて汚れを落とせればそれで良い。そんな無駄な時間を使うくらいなら、一分でも早く寝て明日に備えろ。
 そんな感じに怒り出しそうですらある。
 エイラの考えていることは、宮藤もわかっているのだろう。苦笑しながら、
「ハルトマンさんとミーナ隊長に説得されたみたいですよ」
 詳しくは語らなかったが、宮藤がダシに使われたことは想像に難くなかった。

「結構本格的だな」
 大浴場に連れてこられたエイラは、驚きの声を上げた。
 洗い場にはどこから持ち込んだのか、テーブルや椅子が置いてあり、その上にはティーセットやクッキーが乗せられていた。
「来たか、エイラ」
 湯に浸かった坂本が、徳利と猪口を載せた盆を浮かべ、扶桑酒を飲んでいた。
 とてもご機嫌らしい。酒と風呂とでほんのり赤く染まった頬は緩み、鼻歌を歌っている。
 なるほど、ミーナが賛成するわけだ。
「しかし、まぁ……」
 辺りを見回すと、皆タオルを一枚巻いているだけである。
 なんとも奇妙なお茶会だ。
 エイラは軽く身体を流すと湯船に入り、隣に腰をおろした。
「ほら、お前も飲め」
 坂本が湯に浮かべた盆を泳がせながら、エイラの隣に寄り、酒を注いだ猪口を差し出した。
「すっかり出来上がってんな……。っていうか、お茶会じゃないのかよ」
「細かいことは気にするな!」
 はっはっっは、と笑い声をあげつつ、猪口をぐいぐいと押し付けてくる。
 断れそうにない。
 夜間哨戒の真っ最中であるサーニャに申し訳ないと思いつつ、猪口を干した。
 そして徳利を取り、空になった猪口を満たして、坂本へと返す。
 坂本は上機嫌に笑いつつ受け取ると、一気に呷った。
「あら、もう始まってるのね」
 ミーナがしっとりとした動作で湯船に入ってきた。
「あれ。早いな、隊長。遅くなるって聞いてたけど」
「今日はあまり書類が無くて助かったわ。サーニャさんには悪いけど、私も楽しみにしてたの」
「私が聞いたのはさっきだったぞ……」
「勢いに任せて連れてこないと多分来ないから、って宮藤さんが言うものだから」
「んなっ」
 宮藤の奴め……。あとで、シメる。
「サーニャさんとは、また今度ということで話が付いてるわ。残念だけど楽しみにしてるって」
「本当に知らないのは私だけだったのかよ……」
「はっはっはっは!」
「少佐も何がおかしいんだよ!」
 ミーナも笑っている。
「あの宮藤にすら手玉に取られる私って……」
 エイラは肩を落とした。
 ざぷ、ざぷ、と音がして、エイラの隣に誰かが腰をおろした。
 振り向くと、そこにいたのは宮藤。
 これぞ幸いとばかりに、エイラは今の鬱憤をぶつけるべく、宮藤の両頬をつねり、引っ張った。
「オ・マ・エ・ナァー……!」
「ううぇ!?い、いひゃいれふえいりゃひゃん!!」
「はっはっはっは!」
「あらあら」

 皆、思い思いに時を過ごしていた。
 ハルトマンはバルクホルンの菓子を奪って湯船を泳ぎ回り、リーネとペリーヌは座って茶を飲んでいる。
 ルッキーニとシャーリーは、胸を揉みまわって満足したらしく、さっさと上がってしまった。
 アドリア海に浮かぶ月は白くて大きく、とてもきれいだ。
 全く文句のつけようがないのだが、ただ、ここにサーニャがいないのが、寂しい。
 ちらり、と右に目をやると、ミーナが坂本に寄りかかるような姿勢で酌をしている。
 あれがもし、自分とサーニャだったら……。
「いいなぁ……」
「え?どうしたんですか、突然」
 つい漏れたつぶやきに、律儀にも、宮藤が反応した。
「別に、何でもねーよ」
「……サーニャちゃん、来れなくて残念ですね」
 あっさり見透かされてしまった。
 そんなに自分は単純なのだろうか。
 普段の生活を棚に上げ、そんな事を考えてしまうエイラだった。
「ん……、まぁ、な」
「誘ったとき、自分はいけないけど、エイラさんはちゃんと連れてってくれって言われたんです」
「サーニャがか?」
「はい。次にやるときは参加したいって」
 エイラは溜息をつく。
 宮藤もサーニャも、自分にとても気を使ってくれている。
 ありがたい半分、自分の理想像には程遠い事を思い知らされた気分だ。
「はい、エイラさん」
 少し落ち込んだ顔をしていたエイラに、宮藤は徳利を向けた。
 エイラは黙って猪口をさし出して、酌を受ける。
「ありがとな」
 一息に呷った後、エイラが呟くように言い、宮藤は微笑を返した。
 何についての礼だったんだろう。
 月を見上げつつ、ぼんやり考えるエイラだった。



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