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スオムス文庫 ともビュー-1-1『狐狩り』

 薄暗い執務室。
 か弱いランプの灯を頼りに、智子は書類仕事に勤しんでいた。
 普段はエルマが手伝ってくれ、こんな時間までかかることはないのだが、この日は知恵熱で療養中なため、皆が寝静まる中一人超過勤務と言うわけだ。
 医務室のベッドでぐったり倒れ伏すエルマを思い出すと、いろんな意味で可哀想になってくる。
 ペンを置き、少し身体を伸ばそうとすると、扉がノックされた。
「どうぞ」
 誰だろう。
 ハルカとジュゼッピーナではないだろう。あの二人はベッドに縛り付けてある。
 無言で入ってきたのは、ビューリングだった。
 顔色があまり良くない。思いつめた感じさえある。
 元々愛想が良いとは言えないが、こういう表情を見せるタイプの人間でもなかった。
「どうしたの?」
「ん。まぁ、な……」
 歯切れが悪い。普通なら言い淀むような事でも、はっきりと口に出すビューリングらしくない。
「具合が悪いなら医務室にいきなさい」
「別に、そういうわけじゃない」
 ビューリングは煙草に火をつけると、不味そうに煙を吐き出した。
「ここ、禁煙なんだけど」
「そうか、すまん」
 そう言って、まだ長い紙巻を靴の底でもみ消し、吸殻をゴミ箱へと放り投げた。
 なんとも調子が狂う。
 智子はペンを置き、立ち上がった。
 何から何まで様子がおかしい。
 ちょっと腰を据えて話し合うべきだろう。
「そこ、座ってて。今コーヒー淹れるから」
 部屋の隅にある休憩用のソファを指差すと、智子は戸棚からインスタントコーヒーの入った缶を取り、ざらざらと、大雑把にカップへ注いだ。
「適当だな」
「きゃあ!?」
 てっきりソファに座っているとばかり思っていたビューリングが、何故か智子の後ろにいた。
 しかも、耳に口がくっつきそうな位の距離で囁いた。
 智子は慌てて距離をとろうとしたが、その拍子にカップを落とし、割ってしまった。
「ち、ちょっと、なんなのよ」
「すまん。驚かす気はなかったんだが」
 そう言いつつ、ビューリングは智子の手首を捕まえて壁へ押し付ける。
 驚かす気がないなんて、嘘だ。
「トモコ、震えてる」
「び、びっくりしただけよ」
「目も少し、潤んでるな」
「嘘付かないで。こんなに暗いんだから、見えるはずないじゃない」
「お前の目はきれいだからな。暗くてもよく見える」
「なっ」
 ほぼ密着するような距離で、二人は囁くように言い合っていた。
 この体勢は良くない。
 毎夜毎夜忍びこんでくるハルカに対して覚えるのと同種な、言いようのない危機感を、智子は感じていた。
「離して」
「嫌だ」
「離しなさいったら」
「嫌だ」
 ビューリングはますます手に力を込め、智子を押さえ込んだ。
 首筋に顔が埋められ、呼吸が肌をくすぐる。智子は身を強ばらせた。
「ちょっと……!もう、なんなのよ……!?」
 大声は出せない。
 ただでさえ女好きという不名誉な扱いを受けているのだ。こんな所、見られたらなんと言われるか。
 そんな智子の弱みを見透かしているかのように、ビューリングは智子の白い肌へと舌を伸ばした。
「ひっ……」
 身体を引きつらせ、声を出すまいと智子は耐える。
 ビューリングはそんな抵抗を楽しむように、わざと聞こえるような音を立てて首筋を吸った。
「痕が残るかもな」
「な、なんで……」
「嫌なのか?普段あれだけの事をされているのに、このくらいで?」
 顔を上げ、智子の顔を見つめるビューリング。
 ランプの灯は乏しかったが、智子の目から流れる涙を照らすには十分だった。
 智子は声もない。
 どうしてビューリングがこんな事をするのか分からなかったし、ビューリングの言葉には責めるような響きもあったからだ。
「何故泣く?」
「な、泣いてない……!」
「嘘だな。トモコは嘘つきだ」
 舌で涙を舐めとり、ビューリングは小さく、サディスティックに笑った。
 智子はもう、目を開けていられなかった。
「ネウロイ相手だと、あんなに勇敢なのにな。こうして迫られるとすぐに撃墜されてしまうわけだ」
 反論なんてもう良い。このどうにかなってしまった同僚、いや、友人から、逃げてしまいたかった。
 だが、智子がビューリングを押しのけて逃げるには、もう遅すぎる。身体に力が入らない。
 今出来る抵抗は、せめて床に崩れ落ちないように、震える足で踏ん張ることだけだった。
「……んっ!?」
 唇に柔らかいものが触れて、離れた。
 驚いて目を開けると、視界はビューリングの顔で一杯だった。
 そしてまた、唇に何かが触れる。
「え、え……?」
「トモコの口は甘いんだな」
「なっ……!?」
 ようやく唇に触れていたのが、ビューリングの唇だと言う事に気が付き、智子は一気に顔を赤くした。
「私の口はどうだった?」
「な、なんなのよ……!どうだっていいじゃない……!」
「聞きたいんだ。教えてくれたら、今日はもう何もしない」
「今日はって……!」
「トモコは強引にされるのが好きなのか?そういえば、いつもジュゼッピーナやハルカには強引に……」
「ち、違う!」
「じゃあ教えてくれ」
「う、うう……。そんなこと言われても……」
「わからない?」
「そ、そう。わからないのよ」
 だから離して。
 そう言おうとした瞬間、ビューリングは両手を離し、智子の顔を挟みこむように抑えた。
 そして、半開きになった智子の口に自分の口を押し付け、舌を深く侵入させる。
 まずは智子の舌を、たっぷりと舐めて味わい、続けて歯列をなぞり、舌下の柔らかい所をつつき、また舌を絡める。
 たっぷり5分かけて、智子の口内すべてを味わうと、ようやく口を離した。
 そして、やや息を弾ませつつ、
「……どうだった?」
 目を回した智子へ、そう問いかけた。
「に、にがかったれひゅ……」
 床に尻餅をついた智子は、そう答えるのがやっとだった。



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