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スオムス文庫 サニャイラ-10-1『銀糸の束』

 サーニャが目を覚ますと、見慣れない人間が部屋にいた。
 誰だろう?
 スオムスカラーの軍服を纏う短髪の少女は、いつもエイラがやっているように、テーブルにカードを広げて何かを占っていた。
 見間違いだろうか?
 どうしてもその後姿がエイラとダブって見え、サーニャは目をこすった。
「あの……」
「あ、サーニャ。起きたのか?」
 声をかけると、短髪の少女はくるりと振り返り、エイラと瓜二つの顔でにっこり微笑んだ。
 ぽかん、と口を開け、少女を見上げるサーニャ。
「どうした?私の顔に何かついてるか?」
「エイラ……?」
「そうだけど……、サーニャ、寝ぼけてるのか?」
 たとえ寝ぼけていても、サーニャがエイラを見間違えるはずはない。
 何度見直しても、やはり、エイラだった。
 背中まであった色素の薄いきれいな髪は、今は首筋を覆うだけになっているが……。
「その髪、どうしたの……」
「あ、これか?」
 エイラは何故か嬉しそうに顔をほころばせ、懐からロープの切れ端を取り出した。
「はい、サーニャ。お守り」
 ロープの切れ端はすべすべとした不思議な材質で、ほんのり甘いにおいがする。
 サーニャはこのにおいに覚えがある。
 かぎなれた落ち着くにおいと言ってもいい。
 さぁ、と顔から血の気が引いていくのを、サーニャは感じた。
「え、エイラ……?まさか……」
「うん!これつくるために切ったんだ!」
 理解出来ない。
 まだ頭が眠っているのか?
 サーニャはなんと言っていいかわからず、窓明かりを照り返す銀色の糸束と、大好きな長い髪をばっさりと切り落としたエイラとを、ただ交互に見比べていた。
 一方、顔色のすぐれないサーニャを見て、エイラも困惑していた。
 気に入らなかったのだろうか。
 今までずっと伸ばしていた髪を切るのは、中々勇気のいることだったのだが……。
「なんで……、どうして……?」
 サーニャはエイラの肩を掴むと、わずかに潤ませた瞳で、必死に問いかけた。
「ち、ちょっとサーニャ!?」
 がくがくと肩を揺らされ、困惑するエイラ。
 どうしてサーニャが泣きそうな顔をしているのか、まったく分かっていなかった。
「お、落ち着いて、サーニャ!」
 段々目が回ってきたエイラは、サーニャの腕を掴んで止めると、一呼吸置いて説明を始めた。
「夕べ、サーニャが出かけた後、坂本少佐と会ってさ、まぁ、いろいろ話したんだよ。ほとんどが雑談とか、訓練とか、お小言だったんだけど」
「……」
 サーニャはじっとエイラを見つめている。
 エイラは気圧されるような気分で話を続けた。
「それで、えーっと……、扶桑には、大事な人の髪の毛を持って戦場に行く風習があるんだって。ほら、髪には不思議な力が宿るっていうだろ?お守りになるんだってさ」
「うん……」
 サーニャも、その話は宮藤から聞いたことがある。
 だが、それはあくまで数本を包んで持っていくという事で、縄を作る習慣ではなかったはずだ。
 それに、エイラがサーニャの髪を欲しがるならともかく、何故自分の髪をバッサリと切り落としたのか。
 今だに納得がいかない。
 なんとなく、エイラが的外れな行動に出たということだけは想像できたが。
「それで思いついたんだ。私はいつもサーニャと一緒にいけるわけじゃない。だから、せめてこれがサーニャを守ってくれますようにって。
 少佐から聞いたときは何本かって言われたんだけど、多ければ大いに越したことはないもんな」
 そしてエイラは得意げに胸を張り、サーニャは頭を抱えた。
 素直に言えば、嬉しい。嬉しいのだが、どうしてエイラはこうなのだろう?
「バカ……」
「うぇっ!?」
「エイラのバカ……!」
「さ、サーニャ!?」
 ぼふっぼふっと気の抜けた音を立て、クッションがエイラの頭を叩く。
 エイラは何故怒られているのか、ちっともわかっていない。
 サーニャだって分かってなかった。
 ただ、お互い気持ちは通じている。
 銀糸の束を握ったサーニャが部屋を飛び出す寸前、彼女はありがとう、とエイラに言い残して言った。
 
 

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