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スオムス文庫 クルマル-1-7『不機嫌なバースデイ』

 今日はマルセイユの誕生日。
 クルピンスキーは早朝より途絶えること無く贈られてくる、プレゼントの山の受け取りに忙殺されていた。
 マルセイユは引退した後、所在は公にされていない。
 そのため、彼女のファンから贈られたものはほとんどないのだが、マルセイユの場合、同業の軍人や高官にファンが多かった。
 そういった連中にはあっさりと住所が割れてしまい、あっという間にリビングの一角を占領されてしまった。
 クルピンスキーは予め予測していたよりも遥かに大量のプレゼントを汗だくになって振り分けつつ、何度目かわからないチャイムでドアへと駆け出す。
 そんな光景を、マルセイユは面白くなさ気に眺めていた。
 彼女からすれば、居留守を使って後で受け取れば良いだけの話。なんだったら不渡りで送り返させてもいい。
「真面目なヤツ」
 吐き捨てるような一言は、愛想良く郵便局員に応対するクルピンスキーには、届かなかった。

「やっと落ち着いたかな……」
 夕方が近くなり、ようやくクルピンスキーは座ることが出来た。
 すでにリビングの半分以上が、綺麗にラッピングされた箱の山で埋まっている。
 開けてくれとマルセイユには言ったのだが、彼女は山の中からワインの瓶だけ集めてきて、まだ日が高いにもかかわらず一人で飲んでいた。
 数本の空瓶に囲まれたマルセイユは、誕生日だというのに著しく不機嫌で、クルピンスキーが話しかけてもそっけない返事しか帰さない。
「まいったなぁ……」
 クルピンスキーは頭をかきつつ呟いた。
 夕食はレストランに予約してあるし、プレゼントに用意したイヤリングも鞄で出番を待っている。
 しかし、当のマルセイユがこれでは連れ出せそうにないではないか。
 まいったなぁ。クルピンスキーは再び漏らした。
 今回ばかりは何故不機嫌なのか、まったくわからない。
 意地っ張りで子どもっぽいところのあるマルセイユだけに、一度こうなってしまうと中々手がつけられないのだ。
「ね、ねぇ。ティナ?」
「……」
「その、私何かしたかな」
「…………」
「今日、誕生日だよね。夜でかけない?」
「………………」
 話しかけても、ワインを飲み下す音が聞こえるだけだった。
 
 結局、クルピンスキーは夕食を有り合わせのもので作ることに決めた。
 折角のマルセイユの誕生日だというのに、いつも食べているものと変わらないメニューというのは残念だったが。
「ティナ、そろそろ晩ご飯つくるけど……」
 相変わらず、返事はなかった。
 何が彼女をそこまで怒らせたのだろう。
 クルピンスキーは頭を悩ませるが、考えても考えても、行き着くのはわからないという結果だけ。
 段々と悲しい気分に包まれつつ、クルピンスキーはそっと、炬燵にあたるマルセイユへと近づいた。
「ティナ?」
 恐る恐る、顔を覗き込む。
 マルセイユは目を閉じ、アルコールの臭いが混ざった寝息を、すうすうと吐き出していた。
「寝てたのか……」
 クルピンスキーは少しだけ、希望が見えた気がした。
 寝ておきた頃には、もしかすればいくらか機嫌がよくなっているかもしれない。
「よい、しょっと……」
 このまま炬燵で寝かせておくのは体に悪い。マルセイユを抱き上げると、寝室に足を向けた。
 廊下に出るとひんやりとした空気が身を包み、マルセイユも寒いのだろう、きゅっと体を丸め、クルピンスキーに体を押し付けた。
 クルピンスキーは僅かに微笑を零しつつ、起こさないようそっと運び入れる。
 寝室も廊下に負けないくらい寒い。
 すっかり冷え切ったベッドにマルセイユを寝かせると、クルピンスキーは数枚の毛布をかけてやり、数回、癖のない絹糸のような髪を撫でた。
「何で、怒ってたのかな」
 返事がないのを承知で二言三言話しかけ、寂しくなって、やめた。
 立ち上がり、寝室の扉に足を向ける。
「待てよ」
 ドアノブに手をかけたところで、後ろからかけられ手を止めた。
 クルピンスキーはゆっくりと寂しげな笑を浮かべつつ、
「起きたんだ」
 そう言って振り返った。
「悪かったよ」
「え?」
「今日は、私が悪かった」
 ばつ悪げに顔を背け、マルセイユは謝罪の言葉を繰り返した。
 クルピンスキーは狐に包まれたような顔で、扉の前につったっている。
「いいから、ちょっとこっち来いよ」
 マルセイユはそう言って、手招きをした。
 そしてクルピンスキーがベッドに腰を下ろすと、再び悪かったと呟いて、その右腕を捕まえた。
「ねえ、何があったの」
 マルセイユの手に自分の左手を添えつつ、クルピンスキーは優しげに問う。
 マルセイユは、気まずげに目をそらすだけだった。
 しばらくは、無言だった。
 冷気が体温を奪い、流石のクルピンスキーも寒さに身を震わせ始める。
 その頃になって、ようやくマルセイユは、決心したように口を開いた。
「今日。誕生日、だろ。私の」
「うん」
「だから、その、今日くらいは私の言う事聞いてくれても良い、と、思う」
 マルセイユはクルピンスキーの返事を待たずに腕を引き、布団へ引きずり込んだ。
 驚いた顔のクルピンスキーに覆いかぶさるような体勢で、マルセイユは見下ろしている。
 マルセイユは静かに顔を下ろし、クルピンスキーがからかいを口にする前に、その出所を塞いだ。
「ん……っ」
 クルピンスキーは驚いて体を強ばらせていたが、やがて力を抜いた。
 マルセイユはそれに満足すると、舌を挿入し、口内を舐めまわした。普段、クルピンスキーがやっているのと、よく似た動きで。
 服を脱がし、マルセイユは夢中でクルピンスキーの体を貪った。
 舌遣いや指の動きが、たどたどしいながらもクルピンスキーのやり方に似ている。
 無意識だったが、マルセイユは満足だった。

 翌朝クルピンスキーは、寝息を立てるマルセイユにそっと、おめでとうを伝えた。
 マルセイユはちょっとだけ、頬を緩ませた。



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